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会長(候補)挨拶

 

R2.11.14
京都大学土木会会長
三村 衛 

 昭和56年交通土木工学科卒業,昭和58年交通土木工学専攻修了の三村でございます.このたび,米田前会長の後任として伝統ある京都大学土木会(京土会)の新会長候補として推薦をいただきました.諸先輩,歴代会長の錚々たる業績を顧みて改めて身の引き締まる思いでございます.また本年度は新型コロナウィルスのため,総会を実施することができず,異例の形でのごあいさつとなることをご了承いただきたく存じます.
 
私は本年度土木コース,環境コース,資源コースからなる地球工学科の学科長を仰せつかっており,学科運営に携わっておるところでございますが,ご承知のとおり,昨冬からの新型コロナウィルスの影響を受け,本年度学期始めから先例のない非常事態の対応に追われております.まず,今年度前期の大学の様子をお知らせしたいと思います.人が集まることによって感染が拡大するということで,人的接触を最小限にとどめるというためにすべての講義をオンライン方式とすることが全学で決定されました.工学部でもすべての学科においてインターネットを介したウェブ配信によるオンライン講義方式を採用することとなりました.講義といえば教員が教壇で板書をし,学生はノートを取るというのが定番でしたが,対面式による講義を認めないという方針に従い,今やどなたも御存じと思われるZOOMによるウェブ配信型のオンライン講義をスタートさせました.講義担当の先生方には講義資料の新規作成と配信,学生からの質問やレポートのやり取りなど,従来なかった業務をお願いすることになり大変ご苦労をおかけいたしました.巷間では,オンライン方式で手抜きをしているかのような報道も見聞いたしますが,私の知る限り地球工学科の先生方は大変しっかりとしたオンライン講義のための資料を作成され,学生からの質問や課題にも懇切丁寧に対応されており,逆に従来と比較しても仕事量は増大していると思います.当初はどうなることかと心配いたしましたが,実際に始めてみますと細かな問題点は出てまいりましたものの,実施しながら修正して4月中には軌道に乗って非常にスムーズに進めることができました.特に2回生以上の学年にとって,座学である講義をオンラインで受講することは,時間に縛られず,講義の録画を繰り返し視聴できるというメリットがあり,今後も活用できるツールであることがわかりました.一方で理系の教育研究の核となる実験と実習についてはこの形がよいという訳ではありません.実験は自分で直に対象物に触れて現象を確認することに意味があるわけですが,閉鎖空間に大人数が集まれないという制約のために実施できませんでした.代替措置として,教員が実験を行ってその様子を撮影して配信,実験データを学生に配ってレポートを作成してもらうという形式が多く採用されました.測量実習も屋外ではありますが,多くの学生が集まって作業をするということで通常通りの実施を見送りました.しかしながら,教員,学生ともに映像視聴で済ませることへの抵抗は大きく,新型コロナウィルスの状況が改善すれば,完全ではないにせよ,対面式で実際に実験をやってもらう体制を整えておき,流行が収まる傾向をみせた夏季休暇中に集中講義的に実施いたしました.
 負の側面についても述べておきたいと思います.本年度新入学の1回生は,入学式は中止,前期ガイダンスはZOOM録画配信ということで,入学後全く登校できない状態が続きました.我々もそうでしたが,1回生がスタートして大学の講義をはじめ,新しいクラスメートとの他愛のない話やクラブ,サークル活動といったキャンパスライフの記憶は昨日のことのように蘇ると思います.新しい級友との出会いもなくZOOMによる講義を受講し,誰と会話することなく自室で淡々と時間が過ぎていくだけの毎日は彼らにとって過酷なものであったであろうことは想像に難くありません.地球工学科では,各研究室5名程度の学生を割り当て,学習面や生活面の指導,相談を受け持つチューター制度を導入して運用しておりますが,やはり直接面談することはかなわず,ZOOMを介してとなりました.また京土会にも援助いただいております創立記念日の桂キャンパス訪問についても残念ながら中止いたしました.このように,教員と学生の交流という観点からも本年度は大変残念な状況であると言わざるを得ません.学科としても学生のメンタル問題を注視しており,新たに開設された吉田第二保健室の活用をはじめ,11月には希望者を募って桂の研究室に来ていただいて研究の一端に触れてもらうとともに,教員や大学院生との歓談を通じて学科の一員として繋がっている人たちが居ることを実感していただくよう企画しております.
 本学のミッションの一つにもなっております国際化に大いに貢献しております,学部教育における土木系の国際コースでございますが,平成23年4月の開設から既に9年の歴史を刻み,今や地球工学科の一部として当たり前のように運営されております.遅ればせながら全学的にはKyoto iUPというシステムが2年前に始められました.このプログラムは,外国の優秀な高校生を奨学金付きで学部に入学させ,日本語で教育するという仕組みになっておりますが,国際コースの運営方法を大いに参考にしていただいたと自負しております.地球工学科には初年度はミャンマーから,次年度はアメリカからともに各1名の学生がKyoto iUPの枠で入学して現在国際コースのプログラムに混じって勉学に励んでおります.国際コースでは8名の外国人教員とともに日本人教員も協力しながら講義・演習,実験をすべて英語で教育している京都大学で唯一の教育プログラムであり,本学の国際化というミッションに多大の貢献をしていると自負しております.大学当局からはもう少し評価していただいてもいいのではないかと感じております.国際コースの学生の中には新型コロナウィルスのために来日がかなわない者もおり,満足できる状況ではございませんが,ウェブ配信によるオンライン講義は世界中ネット環境さえ整っていればどこにいても視聴できますので,不自由なく受講してもらっています.良し悪しは別としてアフターコロナの大学教育の一つの有り方として意識しておく必要があるでしょう.
 社会に目を転じますと,1ヶ所に集まって頻繁に行われてきた対面方式の会議や各種委員会がすべて遠隔会議方式で行われるようになり,皆がこれである程度用が足りることを認識してしまいました.1年前を振り返りますと,学外での会議や委員会のために東奔西走していましたが,今では別世界のできごとのように感じられます.またクラスター発生を避けるために,忘年会や新歓コンパなど研究室で当たり前であった年中行事も取りやめとなっております.この影響は社会に深刻な影響を及ぼしており,飲食産業をはじめとして,航空・鉄道などの運輸産業や小売業などは大きなダメージを受けておられ,京土会関係の皆さま方の中にも大変ご苦労されておられる同窓生がおられることと拝察します.後年振り返った時,2020年は大きなパラダイムシフトの年であったといわれるほどの社会の転換を迎えているのかもしれません.しかし何事もネットを介した電脳空間で済んでしまうということはなく,人と人との交わり,インタラクションは我々にとって欠くべからざるものであり,face-to-faceの重要性を再認識する機会を与えられたとも考えられます.ピンチはチャンスと申しますが,今こそ知恵を出し合ってアフターコロナ時代の社会とインフラの有り方を世に発信し,実現していくことが我々に課せられた使命ではないでしょうか.こうした危機の時代こそ温かい結束力を持つ京土会が力を発揮する絶好の機会であると思います.様々な分野でご活躍されている京土会の先輩方のご指導,後輩諸氏のご協力をお願いしたいと存じます.例年に比べて短期間となりますが,京土会会長としての責務を全うする所存でございますので,どうかよろしくお願い申し上げます.末筆とはなりますが,京土会のますますの発展と会員の皆様のさらなるご発展を祈念いたしまして,ご挨拶とさせていただきます.


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