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会長挨拶

 

H29.6.17
京都大学土木会会長
大津  宏康
 

    どうも,昭和54年卒の大津でございます.伝統ある京都大学土木会,いわゆる京土会の会長を務めるにあたり,身のひきしまる思いでございます 
 本日開会挨拶として,宇野伸宏先生が話されましたように,土木系は国際化を促進してまいりました.ご承知のように,京土会は今年で120周年を迎えます.前回は110周年と,10年単位でこの資料をまとめておりますが,現在は120周年の記念誌を立川康人先生を中心に草案を練っていただいています.

 この10年間,2006年に桂キャンパスに移動しまして11年を迎えます.この10年間は桂にいたわけですが,その間,おそらく工学研究科だけでなく京都大学を代表する国際化に関するパイオニアという地位を私たちは築いてきたと思います.

 具体的には,退職された環境系の松岡譲先生がリーダーとして2008年にグローバルCOEプログラム「アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点」を立ちあげ,これに関連しまして英語のみの博士課程を設立しました.それから採択自体は2009年ですが,G30(大学国際化のためのネットワーク形成推進事業)による学部の国際コースを設立しました.これにより,学部,修士,博士の9年間を一貫して英語で教育を受けられる課程を設立することができました.現在もそれは継続しております.

 最近は他の学科とか,専攻の方といろいろ話をすることがありますし,おそらく一部のOBの方も疑念をいだく部分があると思うのですが,「そんなに英語ばかりで教育して,日本人の教育がきちんとできているんですか」というお話があるかと思います.今日はこの場をお借りしまして,それに対する私見を述べさせていただきます.

 たまたま私はこの3月まで副研究科長をしておりました.八大学工学系連会(一般社会法人 八大学工学系連合会)という会がありまして,七帝大プラス東工大の八大学の各工学研究科長プラス副研究科長がメンバーです.この組織は年に一回,文部科学省それから経団連(経済団体連合会)等の財界に提言を出します.今年は国際化に関する提言を出しまして,5月に発表しました.たまたま私が主査を務めさせていただきまして,もし中身に興味のある方がございましたら,インターネットのYahoo!でもGoogleでもけっこうですが,「八大学提言」と検索していただきますと,かならずそこに提言書が出てきます.

 その提言書の中で,なぜ大学は留学生を引き受けるかとこのことについて議論しました.そのなかで「三つの目的があるのではないか」という形にさせていただきました.一番目が,いまの政府の未来投資会議の中で出ていますが,優秀な外国人を日本に定着させること.二番目は,国際化が進むなかで知日派,親日派など日本をサポートしてくれる人材を育成すること.それから三番目,これはあまり議論されてこなかったようですが,留学生を受け入れることで,日本人学生の国際化の活性剤にする.この三つの目的があると考えております.

 実際にこの提言をまとめまして,先月5月10日に出しました.5月末には,JRIA(一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会)という産業団体の各社の代表者との意見交換会に行ってまいりました.そのときに,産業界から出た意見は非常にドライでした.「なにをいまごろ,そんなことを言っているんだ.優秀な人がいれば,留学生だろうと日本人だろうと国籍なんて問わない.優秀であって,かつある程度の日本語ができればそれで結構」というきわめてドライな話でした.

 しかし,そのなかでも特徴的だったのが「このグローバル化のなかで留学生を採用することは,企業風土の国際化に役立つ」という回答でした.つまり,先程申し上げました「大学はなぜ留学生を引き受けるか」の三番目の目的,「日本人学生の国際化の促進」と同じようなニーズがあることがわかりました.

 それからもう一つ,「日本人の英語の能力を上げてください.日本人の英語能力はあまりよろしくないです」と言われました.土木系教室の国際コースは,OBの方々から多くの寄付などをいただいておりますが,留学生と日本人が一緒になって国際コースを形成しています.そういう意味で,日本人学生の国際化ということになります.外形的には留学生の支援としてお金をいただいておりますが,中身としては間接的に,日本人学生の国際化に貢献させていただいていることを,この場を借りてお話しさせていただきたいと思います.

 それから,すこし言葉を選ばなければいけませんが,他分野の先生方と話をしていてよく聞かれるのですが,「そんなに土木さんは留学生の数を増やしてどうするのか」と,そういう質問がございます.もちろん国立大学である以上,日本人学生の教育が一番大事だと思います.その中で,留学生はある種の活性剤になっている.やはり適正規模の数字があるのです.留学生をやみくもに増やせばよいわけではなく,少し例えが悪いですが,触媒が化学反応を促進するのであれば,あまりたくさん入れたら適切な化学反応は起こせない.その意味で,適正な数があるかと思います.

 ただし,良質な活性剤でないとやはりまずいでしょう.そうした状況の中,実はいま,アジアは外国人学生獲得の大競争時代をむかえております.原因は少子化です.特殊出生率で,日本は1.4という数字が出ていますが,実は韓国1.1,台湾1.0,香港1.1,シンガポールも1.1くらいです.

 残念な話ですが,たとえば韓国でしたらソウル大学,中国でしたら清華大学や北京大学などが学生の囲い込みをして,優秀な学生が全員行くのです.それでもまだ足りずに,少子化対策や将来展望,国策として優秀な人材をどんどん入れる,そういう大競争時代になっています.彼らにとって,実はいま日本はアジアの中で魅力のある留学先ではないという評価をしたレポートが出ております.そのような厳しい状況のなかで,優秀な学生を集めるためには,当然魅力ある教育プログラムを提供することが重要であることは言うまでもありません.そして,やはり奨学金が大競争時代のなかで重要な位置を占めることも,言うまでもございません.大競争時代の中で,日本人の教育をするために留学生を活性剤として使うという主旨のもとに,今後とも京土会の皆様にはご迷惑をかけますが,ぜひご支援をお願いしたいと思います.


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