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京土会表紙絵ギャラリー

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昭和56年卒 清野 純史 「Jesus Green界隈の朝」

 2005年6月から2ヶ月ほどCambridge大学Magdalene CollegeのMartin Centreに滞在する機会を得た。
毎朝自転車で人気の無いJesus Greenという講演を横切り、Trinity College前のニュートンのリンゴの木を横目で見ながらKing's Collegeの大聖堂の前を通ってセンターの研究室に通った。
そして仕事の帰りには毎晩のように同室の学生を誘ってPubに行った。もちろん、DNA二重螺旋のワトソンがその仕組みを始めて打ち明けたパブEagleにも行った。
イギリス人は毎晩こんな楽しい酒場でビールが飲めてうらやましいものだと思った瞬間、いやちょっと待てよ、日本でもその気になれば毎晩飲み屋で飲んで帰れるではないか、と思わず苦笑した。
要は心のゆとりと、仕事のメリハリと、そしてちょっとのお金の持ち合わせさえあれば、ということか。
 もう20年以上も前になるが、ラグビーのイングランド遠征でOxford大学と試合をしたことがある。ラグビー発祥の地イングランドはラガーメン憧れの地である。
それゆえ英国人は常に紳士であり、紳士は必ず時間を守るもの、とそのときは固く信じていた。
ところが、試合開始時刻になってもOxfordの連中は誰一人としてグランドに現れない。
遅れること20分、ぱらぱらと選手がグランドにやってきた。
試合後のレセプションで「紳士は時間を気にしないのさ。」と嘯く輩から1点も取れずに完敗した記憶も甦った。
そのときの喧騒の中のクラブハウスで飲んだビールの旨さも忘れられない。
 ロンドンの地下鉄爆破テロが起きたのは滞在期間中だった。
それを知ったのは現地の新聞やTVではなく、発生直後に日本から来たメールだった。
明治の初め、岩倉使節団は2年近くをかけて米欧諸国を歴訪した。
ただ、例え貿易と工業立国として繁栄するイギリスの姿を目の当たりにしたとしても、その情報を伝えるには数ヶ月の船旅を要した。
しかし、使節団員がその間に咀嚼した情報は大きな知恵となってその後の日本の方向性を決定づけている。
今は国内外を問わずどこにいても、十分な量の情報がネットを介して即時に入手できる。
いったい情報入手のための労力や時間の節約は、それに見合うだけの副産物を本当に生み出しているのだろうか。
Pubでそんなことも考えていた。

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